| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-238 (Poster presentation)
近年、様々な強度で伐採されたボルネオ熱帯木材生産林の持続性を診断するために、林冠樹種組成を地上調査と人工衛星解析により広域評価する手法が開発された。この手法では、任意の森林と原生林との間の組成距離が指標として用いられ、原生林との組成距離が近いほど原生性が高いと評価される。ここで原生性が高いと評価された林分では、本当に持続的に更新し、その後も高い原生性が維持されるのだろうか?本研究では、林冠木の種組成に基づく原生性と更新パターンとの関係について検討した。調査は、マレーシア・サバ州のDeramakotおよびTangkulap保護区で行った。林冠木の原生性が異なる伐採後二次林に設置された調査区において、2018年にDBH(胸高直径)10cm以上の樹木を対象にDBHと樹種を記録し、林冠木の種組成を把握した。各林分の更新パターンを把握するため、各調査区内にサブコドラートを設け、小径木(DBH5–10cm)、稚樹(DBH1–5cm)および実生(DBH<1cm)の個体数を記録した。なお、稚樹と実生は原生林の代表種であるShorea属を対象とした。これらのデータを用いて直径階分布を作成して歪度を算出し、更新パターンの指標として用いた。歪度の値が正の方向に大きい程、高木個体に対してより多くの稚樹・実生数が存在することを意味し、連続更新する可能性を示す。その結果、Shorea属の歪度は林冠木の原生性が高い林分でより高く、ある閾値を越えて原生性が下がると急激に低下した。つまり、この閾値以下で、林冠のShorea属個体数に比べて下層のShorea属個体数が急激に低下した。森林管理においては、伐採後の残存林の林冠群集組成が閾値を超えないように維持する必要がある。