| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-241 (Poster presentation)
人工林伐採後は埋土種子や前生樹、種子散布によって更新し、その中でも種子散布は多様性を高める上で重要である。山川ら(2013)は種子散布による更新は短期的には難しいが長期的にはその可能性があると示唆した。したがって、種子散布の森林再生への貢献度を評価するためには継続的な調査が必要であろう。そこで本研究では伐採14年目の種子散布数とその種組成および空間分布を明らかにし、伐採直後の種子散布状況と比較することで、森林再生に対する種子散布の貢献度を中期的に評価することを目的とした。調査は宮崎大学農学部附属田野フィールドのスギ人工林伐採跡地(2005年5月に伐採)と隣接する106年生照葉樹二次林および66年生スギ人工林で行った。2019年5月~12月の間、5mおよび10m間隔でシードトラップを設置し、散布種子の樹種と散布数を記録した。また、同年8月~12月の間、林縁および伐採地内に赤外線センサーカメラを設置し、調査地の種子散布に貢献する哺乳動物を調査した。その結果、伐採地に散布された種子のうち、重力散布種子は林縁から10m以降散布されていなかった。この傾向は伐採直後と大差なく、中期的にも森林再生に貢献しているとはいえないことが分かった。被食散布の鳥散布種子は林縁からの距離に依存性がなく35m地点まで比較的多くの種子が散布されていた。この傾向は伐採直後と異なっており、伐採地内への散布が増加していることが分かった。これは伐採地の植生構造が複雑化し鳥類の伐採地の利用機会が増加したことや、伐採地内に母樹が出現したことが影響したためと考えられる。伐採地と林縁では被食型種子散布を行うタヌキ、アナグマ、ニホンザルが撮影されたことから哺乳動物による伐採地への被食種子散布の可能性がある。以上より、林縁効果は時間とともに変化し、被食散布は中期的には森林再生に貢献すると考えられる。