| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-243 (Poster presentation)
西中国山地の山々では、1960年代頃まで、火入れ、採草、放牧がおこなわれ、広い面積で半自然草地が維持されてきた。しかしながら、草の利用がなくなるにつれて、半自然草地は減少した。西中国山地において、現在も火入れにより維持されている半自然草地は数ヶ所であり、かつて利用された半自然草地は山頂部に小面積で残存している。これまでに、西中国山地の山頂部に小面積で残存している半自然草地について、植物相は明らかにされているが、現在の植生状況や残存する草原生植物の量的な情報はない。本研究では、西中国山地に残存する複数の半自然草地の植生状況を明らかにすることを目的とした。
調査地は、広島県の北西部に位置する深入山、岩倉山、雲月山、大潰山、大佐山とした。深入山と岩倉山は継続的に火入れが行われている半自然草地、雲月山は岩倉山と連続する火入れが停止した半自然草地、大潰山と大佐山は従来の管理が停止した山頂部に残る半自然草地である。それぞれの場所で1m×1mの方形区を設置し、植生調査をおこなった。広い面積で半自然草地が残る深入山、岩倉山、雲月山ではそれぞれ100地点、大潰山と大佐山ではそれぞれ50地点の植生資料を得た。
調査の結果、火入れが停止した半自然草地では、ササの被度が高く、山頂部の半自然草地では、コナラ、イヌツゲ、ダイセンミツバツツジ等の木本類の出現頻度が高かった。継続的に火入れが行われている半自然草地に生育するトダシバ、シラヤマギク、アキノキリンソウ、ヒメハギ、オケラ、ホクチアザミ、ツリガネニンジン等の草原生植物は、火入れが停止した半自然草地や山頂部の半自然草地において出現頻度が低く、出現しない種もあった。
以上より、従来の管理が停止した半自然草地や山頂部に残存する半自然草地は、ササの増加や木本類の生長により、光環境が悪く、草原生植物が残存しているものの、出現頻度は低いことが明らかになった。