| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-244  (Poster presentation)

オトシブミの揺籃形成に対する葉の形による抵抗性:踏査行動の詳細と植物に与える損失
Resistance against leaf-rolling weevil by leaf shape: details of surveying behaviors and leaf loss on plants

*Yumiko HIGUCHI(Kyoto Univ.), Atsushi KAWAKITA(The Univ. of Tokyo)

植食性昆虫には葉を食べる以外に自身や子供の住処を作るために葉を加工するものがいる。こうした昆虫に対しては、葉の形質は餌としてだけでなく加工材料としても作用し、その寄主選択に影響を及ぼしうる。発表者らはこれまでの研究から、産卵時にメスが子供のために葉巻(揺籃)を作成するムツモンオトシブミに対して、寄主植物の一種であるハクサンカメバヒキオコシ(以下ハクサン)の切れ込んだ葉の形がその揺籃づくりを妨げることを明らかにした。そこで本研究では、この抵抗性の作用機序の詳細と揺籃が植物に与える影響の解明を試みた。
 まず、踏査→裁断→折りたたみ→巻き上げといったメスの加工行動のどの段階でハクサンの切れ込んだ葉が忌避されるのか、葉に切れ込みのない同属のクロバナヒキオコシ(以下クロバナ)での加工行動と比較することにより検討した。その結果、メスはどちらの種でも同様に踏査を行ったものの、葉の裁断に至る個体の割合はハクサンで低くなった。さらに、切れ込みを埋める処理をしたハクサンの葉では踏査した全てのメスが葉の裁断に至った。以上より、切れ込んだハクサンの葉の形は主に踏査成功を下げることにより揺籃作成を妨げていることがわかった。
 また、北陸地方ではハクサンとクロバナはしばしば同所的に生育する。両種の揺籃による葉の損失量と地上部の成長特性を野外で比較したところ、揺籃による葉損失量はクロバナで大きかったが、摂食による葉損失に比べるとその量は少なかった。クロバナは高い地上部の成長量を示し、揺籃の有無は次月以降のクロバナの葉数に有意な負の影響を及ぼさなかった。以上より、揺籃形成がクロバナの生育に与える影響は限定的であると考えられた。クロバナでは高い成長特性が揺籃による葉損失を軽減しているかもしれない。一方、成長量のより小さいハクサンでは、葉に切れ込みがなければ揺籃による葉損失による影響はクロバナよりも大きくなる可能性がある。


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