| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-245  (Poster presentation)

クサトベラのニ型間および環境間で果実形態に違いが生じる要因
Factors causing differences in fruit morphology between two morphs and among environments of Scaevola taccada

*栄村奈緒子(鹿児島大学), 古本良(林木育種センター), 内貴章世(琉球大学), 梶田忠(琉球大学), 工藤洋(京都大学)
*Naoko EMURA(Kagoshima Univ.), Ryo FURUMOTO(Forest Tree Breeding Center), Akiyo NAIKI(Ryukyu Univ.), Tadashi KAJITA(Ryukyu Univ.), Hiroshi KUDOH(Kyoto Univ.)

海洋島に固有の植物種の中には、種子に海流散布能力をもつ海岸性の祖先種から、内陸へのハビタットシフトに伴う種分化の過程でその能力を失ったと考えられるものが、様々な分類群でみられる。同様の現象はキク目クサトベラ科のクサトベラ属でも見られる。亜熱帯・熱帯の海岸に広く分布するクサトベラScaevola taccadaは海流散布能力をもつが、同属の太平洋の島々の固有種は内陸に生育し、その能力を失っている。さらに、クサトベラには、果実に海流散布能力をもつコルク層のある型(コルク型)とない型(果肉型)の二型が種内に同所的に存在する。コルク型は海流散布が起こりやすい砂浜で、果肉型は内陸に似た環境である海崖で出現頻度が高い。そのため、本種の果実二型は、海岸から内陸へのハビタットシフトをともなう進化のプロセスを理解するのに良い材料である。
これまでの我々の研究で、本種の二型の果実は海流散布能力が明瞭に異なることがわかっているが、鳥散布能力の違いについては明らかではない。また、砂浜と海崖の主要な散布媒体はそれぞれ海流と鳥であるため、これらの環境間で種子散布に関わる果実形態にかかる選択圧が異なっている可能性がある。そこで本研究では、型間および環境間の種子散布能力の違いを明らかにするために、種子散布に関わる果実形態の計測と鳥による果実採食についてインターバルカメラによる観察を行った。その結果、果実形態計測では、果実サイズが環境間、果肉糖度が型間および環境間で異なる等の違いが見られた。インターバルカメラによる観察では主にヒヨドリがどちらの型の果実も採食しており、二型間の採食頻度に明瞭な違いは見られなかった。


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