| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-253 (Poster presentation)
湿地性植物には風媒・水媒種のほか,虫媒種も多くみられ,湿地植生の保護策を考える上で虫媒植物種と訪花昆虫との相互作用を理解する必要がある.しかし,湿地性植物群集の訪花昆虫相に関する研究は国内外ともに未だ乏しい状況である.また,森林や草地の研究から,花の形質と訪花昆虫相との間に関係が見られることが知られているが(例えば,ハナバチ類はベル型や二唇型の花に、ハエ目は皿形の花へ多く訪花するなど),湿地で同様の関係性が見られるかは未検証である.そこで,島根県飯南町にある赤名湿地を調査地として、主要な開花植物34種の訪花昆虫群集を明らかにするとともに、各昆虫機能群の訪花頻度と花の形質との関連を検証した.
調査は2019年4月~11月に行った.1×3mの方形区を複数設定し,15分間に見られた全ての訪花昆虫を捕獲した.調査は8:30~18:30の間に行い,各植物種を午前と午後でそれぞれ1回以上調査した。また,各方形区の花の開花量を記録し、花形質(大きさ,形,色など)を測定した.
本研究の全調査時間は3,795分で,訪花昆虫の個体数は978個体であった.赤名湿地の訪花昆虫群集では,他の湿地で報告されているように双翅目が優占していた.各植物種における訪花昆虫のクラスター分析により,ハナバチ媒7種と双翅目媒12種,ハナバチ・双翅目混合媒14種,甲虫媒1種に分類された.花色を比較すると,双翅目媒とハナバチ・双翅目混合媒は白色の花、膜翅目媒は青色の花の割合が有意に高かった.また,ハナバチ類は筒型の花,双翅目は皿型の花において訪花頻度が有意に高かった.ハナバチ類・双翅目ともに方形区内の花の数が多いほど,またハナバチ類は花の表面積が大きいほど訪花頻度が有意に高かった.以上、赤名湿地においても他の湿地と同様に双翅目が優占し,花の形質と訪花昆虫グループの関係性については森林や草地と同様の傾向であることが示された.