| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-254  (Poster presentation)

潜葉性甲虫ヤノナミガタチビタマムシへのケヤキ早期落葉の効果
Effect of early leaf abscission on survivorship of a leaf mining beetle

*大澤正嗣(山梨県森林総合研究所), 飯島勇人(森林総合研究所)
*Masashi OHSAWA(Yamanashi For. Res. Inst.), Hayato IIJIMA(FFPRI)

ヤノナミガタチビタマムシ (Trachys yanoi Y.Kurosawa) は、タマムシ科チビタマムシ属の昆虫で、成虫の体長は3~4mm、成虫、幼虫ともケヤキの葉を食害する。幼虫はケヤキの葉に潜葉して内部を食害し、幼虫が潜葉した葉は早期落葉を起こす。そこでこの潜葉性甲虫へのケヤキ早期落葉の影響を調査した。ケヤキ林に釣り下げ式トラップを設置し、10年間、この潜葉性甲虫成虫の個体数変動と、本甲虫発達段階の各期間における気象要因を調査した。また、室内加湿試験として、蓋付ボトルに早期落葉を入れ、加湿区と無加湿区を作成し、両区から発生する本害虫の頭数を比較した。また、野外加湿試験として、早期落葉を地面に敷き、水やりをする区としない区を設定し、それらから発生する本甲虫頭数を比較した。その結果、ケヤキ林における本虫個体数は、早期落葉期間中の降水量が少ない程増加した。また、室内加湿試験では、本甲虫発生数が、加湿ボトルで無加湿ボトルより有意に少なかった。野外加湿試験でも、甲虫の発生は、水やりをする区でしない区より有意に少なかった。これらの結果から、早期落葉期間の降水量により、本甲虫個体密度が影響を受け、降水量が多いと密度が下がり、降水量が少ないと密度が高まることが明らかとなった。早期落葉の効果は、潜葉虫の死亡率を高め、個体密度の増減に寄与しているとする報告と、逆に、潜葉虫の個体密度増減への寄与はほとんどないとする報告が見られるが、本研究の結果、ヤノナミガタチビタマムシでは、早期落葉時期に雨が多かった場合、早期落葉は、潜葉している幼虫の死亡率を高め、個体密度の減少に貢献し、早期落葉時期に雨が少なかった場合、早期落葉は、潜葉している幼虫の死亡率に影響を与えないことが明らかになった。


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