| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-263  (Poster presentation)

特殊な海流散布能力をもつマンネングサ属種群における海洋島進化
Evolution of the genus Sedum having a unique dispersal ability on oceanic islands

*Takuro ITO(Kyoto Univ.), Masatsugu YOKOTA(Univ. Ryukyus), Goro KOKUBUGATA(Natl. Mus. Nat. Sci.)

一度も陸続きになったことがない海洋島において,植物では種子や果実の長距離分散によって祖先種が移入したのち,長距離分散能力の喪失や海岸性から山地性へのハビタットシフトなどを伴った独自の進化を遂げることが報告されている.一方,小笠原諸島では,主に重力散布種子をつけるために長距離分散しないはずのマンネングサ属(ベンケイソウ科)の一種,ムニンタイトゴメ(ムニン)が例外的に父島列島及び聟島列島に分布している.演者らのこれまでの研究から,ムニンは姉妹種である琉球固有の海岸性種コゴメマンネングサ(コゴメ)様の祖先種が過去に小笠原諸島へ定着し,山地性のムニンへと進化したことが示唆されているが,祖先種がどのように小笠原諸島にたどり着いたのかはよくわかっていない.また,演者らは,本来山地にのみ生育するはずのムニンが,聟島列島では海岸に生育していることを見出した.このムニン海岸集団の存在は,海岸性から山地性へのハビタットシフトを考える上できわめて重要である可能性が高いが,その実体は明らかになっていない.本研究では,まず形態及び生態比較,核及び葉緑体遺伝子に基づくムニン種群の網羅的な系統解析から,聟島列島産海岸性ムニンの実体を明らかにする.そしてムニン種群の長距離散布能力の検証改めて行うことで,ムニン種群の海洋島進化プロセスを考察する.


日本生態学会