| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-267 (Poster presentation)
精子競争は理論的に精子の形態に影響を与えうるが、それぞれの個体群の精子競争の強さが実際に精子の形態に実際どのような影響を与えるのかはよくわかっていない。ツバメHirundo rusticaは性選択のモデル種であり、個体群間で父性にかなりのばらつきがあることで知られる(3−30%)。上越市のツバメにおいては婚外子がほとんど存在しないため(<3%)、限られた精子競争下での精子の形態を調べ、婚外子の多いツバメ個体群(>15%)と比較できる理想的な状況といえる。実際に位相差顕微鏡で精子を調べたところ、上越市のツバメの精子は頭部や全長が他の個体群に比べて短いことがわかった。さらに、精子の全長のばらつきはほかの集団に比べて2倍ほど大きかった。これらの結果は精子競争が精子の大きさに方向性淘汰と安定化淘汰をもたらすという理論予測に一致する。婚外子の多い他個体群で行われた先行研究と合わせて、本研究は精子競争の強さと精子の形態の関係を野生動物で見出した数少ない実証例といえる。