| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-269 (Poster presentation)
熱帯雨林樹木には近縁種が多く系統推定が難しい。DNAバーコーディングで使うcpDNAでは、ボルネオ熱帯雨林樹木の詳細な系統推定はできなかった。そこで、同所的なフタバガキ科69種の系統推定をMIG seq法で試み、種分化速度と生態特性(最大直径、動態特性、ハビタット特性)の多様化速度をBayesian Analysis of Macroevolutionary Mixtures(BAMM)で解析してニッチ多様化過程を推定した。MIG-seq法で種間の系統関係がほぼ推定できた。種分化速度は時代とともに増加し、最近の数百万年間に急速に種分化したと推定された。形質の多様化速度は生態特性によって異なっていた。最大直径の多様化速度は古い時代で速く、徐々に低下した。ハビタット特性の多様化速度は、時代が経つにつれて速くなり、Dipterocarpus属、Dryobalanops属、Shorea属Yellow merantiの過去1千万年の多様化速度は特に速かった。動態特性の多様化速度は、Shorea属の一部の系統で過去1千万~数百万年に大きく増加した。以上より、MIG-seq法が近縁種の多いフタバガキ科の系統解析と進化の研究に有効であること、調査地のフタバガキ科樹種の多くが、寒冷化が進んだ後期中新世から鮮新世(今から約1千万年~2.5百万年前)に、ハビタット特性と動態特性の多様化を伴って急速に進化したことが示唆された。
We estimated the phylogeny of 69 tree species of Dipterocarpaceae coexisting at a Bornean rainforest with the MIG-seq method using NGS. Using the phylogeny, we estimated dynamics of speciation rate and diversification rates of life-form (maximum size), demography, and habitat niches with Bayesian Analysis of Macroevolutionary Mixtures (BAMM). The results suggested that Dipterocarpaceae of the study site evolved rapidly with the diversification of habitat and demographic niche during 10-2.5 Mya.