| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-272 (Poster presentation)
脊椎動物において多数の性決定遺伝子が同定されたことにより、性決定遺伝子が頻繁に交代すること、性決定遺伝子に進化しやすい遺伝子が存在するという共通機構が示唆されている。メダカ属は性決定遺伝子が頻繁に交代することが明らかになっていることから、性決定遺伝子の進化の共通機構を明らかにするための最適なモデルの一つである。
日本に生息するメダカの性決定遺伝子はDmyであるが、野生個体からはDmyを持たない雄(XX雄)や持つ雌(XY雌)というような例外である性転換個体が見つかる。これらの性転換の原因が遺伝的であれば、原因遺伝子は将来的に新規性決定遺伝子になる可能性を持つ。つまり、性決定遺伝子交代の初期であると考えられる。
長崎県平戸市の野生メダカ個体群から発見したXX雄の性連鎖解析とノックアウト個体の作成により、新規Y染色体(neoY)上のGsdf(GsdfneoY)がXX雄性転換の原因遺伝子であることが明らかになった。GsdfneoYの上流には、neoY特異的にRetrotransposonの挿入が見られたため、この欠失個体を作成したところ、GsdfneoY個体は雌に性転換した。GsdfneoYのmRNAはGsdfの上流にRetrotransposonを加えた配列であることから、Retrotransposonの発現機構によって性決定機能を獲得したことを示唆している。また、GsdfneoYを持つ野生個体が複数年に渡って多数見つかったことから、この個体群にはDmyと第2の性決定遺伝子であるGsdfneoYの2つの性決定遺伝子が共存していることが明らかになった。