| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-276  (Poster presentation)

発育空間形状に応じた内部寄生蜂の形態可塑性
Morphological plasticity in response to the shape of developmental space in an endoparasitoid wasp

*滝ヶ平智博(岡山大学 環境生命)
*Tomohiro TAKIGAHIRA(Okayama Univ.)

昆虫では,成虫の形態形質は幼虫期の栄養条件に強く影響される.一般に,発育に利用可能な餌資源量が多ければ大きく,少なければ小さな成虫となる. しかし,形態形成を行う空間が制限されている状況下では,その物理的制約によって餌資源量のみに応じて形態形成を行うことはできず,空間形状に合わせて成虫の“大きさ”もしくは“かたち”を変化させる必要があることが予想される.しかし,これまでに成虫形態が発育時の空間形状に応じて変化するかを昆虫で検証した研究例は行われていない.
 ショウジョウバエの幼虫に寄生する飼殺し型の内部寄生蜂は宿主が形成した囲蛹殻内部で全発育過程を完了する.宿主であるショウジョウバエの種内・種間には囲蛹殻形状変異が存在することが知られており,また野外で寄生蜂は複数のショウジョウバエ種を宿主として利用している.このことから,これらの寄生蜂では異なる空間形状で発育する状況が生じており,形状に応じた形態可塑性が発育成功に重要な役割を担っている可能性がある.
 そこで本研究では,タマバチ上科に属するショウジョウバエの内部寄生蜂Leptopilina ryukyuensisを対象に,成虫形態と利用した宿主囲蛹殻形状の関連を調べた.キイロショウジョウバエの野生型系統と囲蛹殻形状変異系統及びその他5種のショウジョウバエを宿主として寄生蜂を発育させ,成虫形態を測定した.また,各寄生蜂が利用した宿主囲蛹殻の”大きさ”と”かたち”を個別に評価した.本発表では,宿主囲蛹殻の”大きさ”と”かたち”が,寄生蜂成虫の”大きさ”および”かたち”に与える効果を統計解析によって検証し,発育空間形状に応じた寄生蜂の形態可塑性について考察したい.


日本生態学会