| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-277 (Poster presentation)
協力行動は、「自分にとって損で相手にとって得である行動」と進化生物学の分野では定義されている。自然選択の考え方に照らし合わせると、協力行動は時間が経過するにつれて淘汰されることが期待されるので、長い年月が経た今もなお協力行動が観察されることは説明を要する。協力行動の進化を説明するために提唱されたメカニズムとして、血縁選択(Hamilton, 1964)、互恵性(Trivers, 1971)などがあげられるが、そのうちの一つに「協力者との関係を続ける一方で、非協力者との関係を打ち切る」というメカニズムがある(Zhang et al., 2016)。このように個体が振る舞う場合、協力者は協力者との関係を維持できるのに対して、非協力者は協力者との関係を維持できない。そのため、協力者は非協力者よりも協力されやすい状況が生まれ、結果的に協力は自然選択に好まれうる。以上では2者間で相互作用する場合を考えてきたが、以下では3者間で相互作用する場合を考えてみよう。3者間で相互作用する場合は、自分以外の個体の数は2個体であり、協力者と非協力者が混在する状況、すなわち、協力者と非協力者が1個体ずつの状況が起こりうる。自分以外の2個体の内訳が、協力者と非協力者が1個体ずつの状況では、この2個体との関係を続ける行動と打ち切る行動のうち、どちらの行動の方が適応的なのかは明らかではない。私は進化ゲーム理論を用いた数理的解析の結果、それぞれの行動の進化の条件を明らかにしたので、それを報告する。