| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-285  (Poster presentation)

環境RNA分析を用いたコイの繁殖行動推定
Estimating spawning behavior of common carp with environmental RNA analysis

*姜明揚(神戸大・院・発達), 山本義彦(大阪環農水研・多様性), 呉盧漢(神戸大・院・発達), 源利文(神戸大・院・発達)
*Mingyang JIANG(Kobe univ.), Yoshihiko YAMAMOTO(Biodiv.C.Osaka), Luhan WU(Kobe univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe univ.)

近年環境DNA手法が生物多様性の保全における有効性が高いとして注目されている。環境中にあるDNA断片を検知し、生息する生物種を特定できる手法である。環境DNA分析では、対象種の分布などの情報が得られる一方で、発育段階や状態(ストレスなど)を判断することはできない。DNAが発育段階などによって異ならない一方で、環境中のRNAを分析することができれば、生物の繁殖行動や状態を推定できる可能性がある。本研究では、コイが繁殖行動を行った時に放出された環境RNAを検出することを目的にした。実験池に雌雄のコイを入れて産卵させた後、卵をバットに移して孵化させた。産卵前後の成魚のいる池、卵孵化前後のバット、仔魚のいるバットから水サンプルをそれぞれ回収した。回収されたサンプルからRNA抽出を行い、逆転写によってcDNAを合成した。Cytochrome B遺伝子領域を対象としたミトコンドリアDNAマーカーとITS1遺伝子領域を対象とした核DNAマーカーを用いて、リアルタイムPCRを行った。その結果、Cytochrome BとITSのcDNA濃度は池の成魚が産卵時にピークに達した後に低下していくこと、同じくバット内の仔魚が卵から孵化した時にcDNAがピークに達した後に低下する様子が見られた。同時に実施した環境DNA実験においてもDNA濃度が同様のタイミングでピークに達していることから、RNAとDNAが同様の挙動をしていることが考えられる。RNAの分解速度はDNAより速いことから環境RNAは検出されにくいと考えられてきたが、RNAが長時間環境水中に存在していることがわかった。


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