| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-286  (Poster presentation)

東アジア産イモリ類に寄生するミズダニ(オヨギダニ属)の分子系統解析
Molecular phylogeny of water mites (genus Hygrobates) associated to newt in eastern Asia

*島野智之(法政大学), 蛭田眞平(国立科学博物館), Tom GOLDSCHMIDT(Bavarian State Coll. Zool.), 西川完途(京都大学)
*Satoshi SHIMANO(Hosei Univ.), Simpei F. HIRUTA(Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo), Tom GOLDSCHMIDT(Bavarian State Coll. Zool.), Kanto NISHIKAWA(Kyoto Univ.)

 オヨギダニ属Hygrobatesには,5種のイモリ寄生ミズダニが記録されている.淡水環境にて広く適応放散したミズダニは,一般的に幼虫期に飛翔性の昆虫に寄生し,分布域の拡大に寄与することが知られており,その後のステージは,水中で自由生活性の捕食者として生活する.一方,いくつかのグループは,幼虫期の後にも貝などに寄生生活をする事が知られている.もっとも,特殊な物として,体表に毒を持つイモリを宿主とし,第2若虫はイモリの口腔内に,成虫は体表から見付けられる.他のミズダニ種にくらべて触肢が安定的に宿主の皮膚を掴めるような特殊な形状になり,鋏角もより長くなっている.
 既知の5種の寄生ミズダニは,これまでのところ宿主と1対1の関係を持つが,更に広域に調べても成り立つのか不明である.宿主であるイモリ自体の多様性の高さから,寄生生物との間で共種分化を繰り返してきたことが予想された.そこで,未記載種を含むことが明らかとなっている寄生ミズダニの系統類縁関係について分子系統学的手法を用いて解明を試みた.
 中国からベトナムにかけて分布するイモリ類より取得した32個体の寄生ミズダニから28S rRNA遺伝子のD3領域を決定し,系統樹を構築した.また一部個体が,ホルマリン固定であったり,消化が進んでいたりするものなどを含むため,サンガー法による配列決定が不可能な個体もあった.そのためMIG-seq法による大規模SNPデータ取得を試み,系統解析を行った.
 結果対象とした寄生ダニは,これまでのところ10形態種に区分されていたが,最終的には必ずしも形態種とは完全対応しないものの同じく10種が認識された.宿主であるイモリの種とは完全に1対1の対応をするものではなく,互いに複数の種と宿主-寄生関係を見せた.


日本生態学会