| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-287 (Poster presentation)
沖縄県の西表島は、日本の最南部の亜熱帯地域に位置し、島内の大部分が人為的な開発がほとんど行われておらず、低地帯から山地帯にかけて貴重な森林生態系が維持されている。また、2019年に沖縄本島北部、奄美大島、徳之島とともに国際自然保護連合(IUCN)の世界自然遺産候補地として推薦された。このような注目を集めている一方で、今後の観光客数の増加や気候変動の影響による西表島の植物への影響が懸念されており、西表島の植物相のモニタリングによる植生変化の把握が求められている。しかし、西表島は平地が少なく、複雑に入り組んだ地形となっており、踏査が困難であるため植物相調査が十分に行われてこなかった。したがって、島内のどこで、どの植物がどのように生育しているか、という基礎的情報が不足していた。そこで、琉球大学では2017年から現在まで、島内全域を対象に、踏査による植物分布情報の収集や、トランセクト法を用いた定量的・網羅的な植物相研究を実施してきた。本発表では、その調査経過の報告と、その中で明らかになりつつある①西表島の維管束植物の種多様性の分布パターンと、②植物相の分布パターンについて紹介する。
調査方法は、西表島内を1 × 1 kmのメッシュに区切り、各メッシュ内に100 × 5 mのベルトトランセクトを設置し、トランセクト内に出現した全維管束植物の種名を記録した。種多様性の分布パターンについての解析は各トランセクトの出現種数を算出し、ArcGIS10.6を用いて地図化するとともに、標高や気候条件などの環境条件と種数との相関関係を解析した。植物相の分布パターンについては各トランセクトの出現種の在/不在データを用いて、Isopam法(Schmidtlein et al. 2010)による植物相の分類を行い、ArcGIS10.6を用いて地図上に図示した。これらの結果をもとに、種多様性の高い地域および植物相の分布パターンの成因や、今後モニタリングすべき地域について考察した。