| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-289 (Poster presentation)
MIG-seq(multiplexed ISSR genotyping by sequencing)法は、PCRをベースとしてゲノムワイドに塩基配列多型を検出できる次世代シーケンシング技術である(Suyama & Matsuki 2015)。主な特徴としては、以下の3点が挙げられる。1)生物種を問わずに用いることのできるユニバーサルプライマーでのPCRと各サンプルに標識タグをつけるPCRによって、ゲノム縮約ライブラリーを構築する(2回のPCR)。2)制限酵素を使用しないため、PCR増幅が可能でさえあれば低濃度・低品質DNA試料でも解析に用いることが可能である。3)発表者らの標準的な解析では、1度の解析で数百サンプルを対象とした場合でも、数百〜数万のSNP(一塩基多型)を検出して解析することが可能である(安価:1,000円以下/1サンプル)。このようにMIG-seq法は、汎用性・簡便性・安価という特徴を持つことから、様々な研究で用いられてきた。
一方で、このようなゲノムワイドSNP分析において一般に解析が難しいとされる対象には以下のようなものがある。1つ目は、得られるSNPには集団あるいは種ごとに特異的なものも多いため、対象とするサンプル間の遺伝的分化が大きい場合(科・属間レベルの解析)には、共有性のあるSNPの数が限られてしまい、十分な識別精度が確保されない可能性である。2つ目はその逆で、遺伝的に極めて類似性の高い個体間や品種間の識別においては、高いエラー率を含む次世代シーケンサーで取得したデータのノイズが悪影響を及ぼす可能性である。本発表では、上記のように解析の難しい対象にも対応することを目指し、新たなデータ解析手法を用いて行った報告例として、造林樹種の精英樹クローンを対象とした個体識別、シイタケを対象とした品種識別、希少種の集団識別、熱帯樹木等を対象とした分子系統分類(種識別)のデータ解析例を紹介する