| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-292  (Poster presentation)

オオイヌタデのトライコーム生産、枝分かれ、開花フェノロジーに見られる表現型統合
Phenotypic integration of trichome production, branching, and flowering phenology in Persicaria lapathifolia

*松田浩輝(佐賀大院・農), 徳田誠(佐賀大学・農)
*Hiroki MATSUDA(Saga Univ.), Makoto TOKUDA(Saga.Univ.)

一般的に、生物に見られる様々な形質は他の形質と交互に作用しながら適応度に影響するため、ある形質の最適値は他の形質との兼ね合いにより変化すると考えられる。生物の進化や環境適応の過程で、複数の形質がどのように影響しながら変化するのかは興味深い研究課題である。このような、複数の多型形質が連動して変化する状態は表現型統合と呼ばれ、多型の維持機構や適応的意義を検討する際、一つの多型形質のみを観察するのではなく、複数の多型形質の関係性を理解することが重要であると考えられる。
オオイヌタデにはイチゴハムシの摂食を阻害する繊毛をもつ有毛型と、種子生産数が有毛型よりも多く繊毛をもたない無毛型が存在する。本研究では、温室内栽培実験により、防御形質と関連し得る枝分かれのしやすさおよび開花時期を二型間で比較した。枝分かれのしやすさの指標として、シュート数および、平均シュート長を記録した。その結果、有毛型の方がシュート数が多く、平均シュート数も長かった。また、開花時期は有毛型の方が遅かった。さらに、開花時期が種子生産に及ぼす影響を明らかにするため、長日条件を一定期間延長し栽培した結果、開花時期が遅い個体のほうが種子生産が少なかった。予備観察により、イチゴハムシは葉が摂食できない場合に穂を摂食する行動が見られたため、有毛型は多く枝分かれすることで穂を食害されるリスクを分散している可能性がある。また、有毛型における開花時期の遅延(栄養成長期間の延長)は、繊毛生産のコストを補う上で適応的な可能性が考えられたが、今回の日長操作実験ではそれを支持する結果は得られなかった。複数の先行研究から、開花時期が遅い個体は種子成熟期間の短縮により種子生産数が減少することが知られていることから、本種においてもそのような原因により減少したと考えられる。今後はイチゴハムシにおける食害以外の要因の影響を考慮する必要がある。


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