| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-296 (Poster presentation)
大阪市内の公立小学校において、動植物の生息情報を収集するとともに、児童らとともに身近な環境に生息する生物を観察することにより生物多様性への理解を促すことを目的に、市民参加による生物相調査を実施した。調査は2018年5月~2019年8月の期間に計60校の小学校で実施した。各学校において、動植物等の専門知識を有する講師及び大阪市エコボランティアが3〜4年生の児童を引率しながら学校敷地内を踏査し、目視により動植物を探索した。発見した動植物を講師が同定し、その種名を地図上に記録した。その場で同定できないものは標本を採集し後日同定した。本解析では、60校のうち、2018年度に調査を実施した30校については春夏期(5~8月)及び秋冬期(9~2月)、2019年度に調査を実施した30校については春夏期のみの調査結果をそれぞれとりまとめ、菌類、藻類及び蘚苔類を除く動植物の生息情報を分析した。
調査の結果、計686種の動植物の生息(生育)が確認された。これは大阪市内で確認記録のある3,893種の約18%に相当する。今回確認された686種のうち36種が大阪市内で保護上注目すべき種として分類されており、アキアカネなど大阪府レッドリストによる準絶滅危惧指定種4種も含まれていた。一方、外来種の生息状況をみると、その割合は27.8%(191/686種)と高く、近畿地方での確認記録がこれまでにないオオハキダメギク等の生育も確認された。
これらの結果から、小学校として整備された緑地を含む空間が都市域では希少になりつつある動植物の生息場所として機能すると同時に、新たな外来種の侵入や分布拡大の拠点にもなり得ることが示唆された。本調査は定性的なもので調査地内に生息する動植物の生息状況を網羅的に把握するものではないものの、生息状況のモニタリングや新たな外来種の侵入監視等において大きな意義があるといえる。