| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-298  (Poster presentation)

パラオ共和国自然保護区におけるAIとWebを用いた生物多様性市民科学の開発と実践
Development and implementation of AI and Web based citizen science project at nature reserve the republic of Palau

*小堀洋美(東京都市大学), 戸金大(東京都市大学), Omar FAUSTINO(Ngardok Nature Rev. Rep. Palau), Theresa LALLY(San Diego State Univ.)
*Hiromi KOBORI(Tokyo City Univesity), Dai TOGANE(Tokyo City Univesity), Omar FAUSTINO(Ngardok Nature Rev. Rep. Palau), Theresa LALLY(San Diego State Univ.)

地球上の種の多様性は減少し続けており、その保全策や生態系管理手法を考える上で、種の基礎情報を得ることは重要である。しかし、地球上の生物の14%しか種名がつけられておらず、得られた情報の地域的偏りも著しい。GBIF(地球規模生物多様性情報機構)の種のデータの86%はヨーロッパと北米で得られており、オセアニア、アジアなど種の多様性が高い地域のデータは極めて少ない。これらの課題を解決する手法として、Webを用いた市民科学は有効な手法である。市民科学は、専門家や行政による人的、時間的、資金的な制約による調査・研究の不足を補完し、広域的なデータを取得することが可能である。
本研究では、全ての生物群を対象とし、WebとAIを用いた市民科学プロジェクトのプラットフォームであるiNaturalistを用いて、国際連携によりパラオ共和国の自然保護区を対象としたプログラムを開発、実践した。プロジェクトの企画団体はマルキョク州ガードック自然保護区、東京都市大学、サンディエゴ州立大、スミソニアン環境研究センターからなり、実施体制の構築、自然保護区を対象としたプロジェクトのアプリの作成や同定のマニュアルの作成などを行った。連携組織は、パラオの行政・教育機関、博物館、高校、米国と日本の大学からなり、人材、リソース、資金の確保の役割を担った。プロジェクトのキックオフイベントは2019年6月6日に実施し、プロジェクトの説明、スマホによる生物写真の投稿、得られた情報の共有を行った。
当日の参加者は75名で、177個体の動植物の写真が投稿された。そのうちの31%(55種)は研究用グレードとして種名が確定された。また、同定された植物の52%はラン科であったことは注目に値する。研究グレードとならなかった理由は、主に送信日時、写真情報の欠如、分類や同定が困難な写真であったことが挙げられた。


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