| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-304  (Poster presentation)

河道内氾濫原湿地に成立する水生動物群集の特徴
Aquatic animal communities in floodplain water bodies

*田和康太(土木研究所河川生態), 永山滋也(岐阜大学流域圏科学), 中村圭吾(土木研究所河川生態)
*Kota TAWA(PWRI), Shigeya NAGAYAMA(Gifu University), Keigo NAKAMURA(PWRI)

 演者らは,河道内氾濫原湿地を多数有している木曽川において,多種の水生動物群集を対象とした生息状況調査を実施した.
 2019年の6月中旬に,木曽川の11か所の河道内氾濫原湿地において,1 mmメッシュのタモ網を用いた定量掬い取り調査を行った.採集された水生動物について,分類群ごとにその個体数を計数した.また,各調査地の電気伝導率,pH,DO,平均水深,平均泥深,平均植被率,面積,スロープ率(各調査地の周囲長に対して移行帯部分の占める割合)等を計測した.
 調査の結果,計47分類群1,993個体の水生動物が採集された.最も個体数の多かったのは,ヌマエビ科であり,654個体が採集された.また,ヌマエビ科とユスリカ科幼虫はすべての調査地で採集された.分類群数が最も多かったのは魚類であったが(11分類群),水生カメムシ類(8分類群),トンボ類幼虫(7分類群)などの水生昆虫についても,比較的多くの分類群が採集された.魚類,水生カメムシ類,トンボ類幼虫それぞれの分類群数について,物理環境との関係性を解析した結果(Random Forest法),魚類では,EC(-)とDO(+)の重要度が高く,水域連続性の高い氾濫原湿地を好むと考えられた.その一方で,水生カメムシ類では,平均水深(-),面積(-),スロープ率(+)の変数重要度が高かったことから,浅く,小面積かつ移行帯の多い氾濫原湿地を好むと推察された.しかしながら,種ごとの解析では,深い氾濫原湿地を好むものも存在した.トンボ類幼虫では,平均水深(+),スロープ率(-),pH(+)の変数重要度が高かったことから,深く,移行帯がそこまで多くない氾濫原湿地を好むと推察された.このように,水生動物の分類群ごと,あるいは種ごとに,好適な河道内氾濫原湿地の環境は大きく異なっており,様々なタイプの河道内氾濫原湿地が成立することが,水生動物群集の多様性を高めることが示唆された.


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