| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-311  (Poster presentation)

環境DNAの亜種や飼育系統との交雑の判定への適用
Application of environmental DNA to detect hybridization with subspecies or breeding lines

*大井和之, 貞末加織(九州環境管理協会)
*Kazuyuki OOI, Kaori SADASUE(Kyushu Env. Eval. Assoc.)

メダカや金魚をはじめとする魚類の飼育は広く親しまれている。しかしながら、飼育系統を野外へ放流してしまうと地域在来の個体群に遺伝的攪乱を生じさせるおそれがある。また、水産種苗の放流に伴い本来の分布域外に広がった魚種も少なくなく、同種であっても外来個体群由来の遺伝子が広がっている可能性がある。
これまで、このような飼育系統や国内外来種との交雑の判定には、生物の組織(標本)からDNAを取り出して遺伝子型を分析する必要があった。このため、魚を捕まえてひれの一部を切り取るなど、生物を傷つけることが避けられなかった。また、野外の生息地から全個体を捕獲して検査することは難しく、検査した個体が全て在来型であっても、検査から漏れた外来遺伝子型の存在を否定することはできなかった。
環境DNA分析では、調査対象地の水試料(500mL程度)からDNAを取り出し、超並列シークエンサーを用いたメタバーコーディング分析により、試料に含まれるDNAの遺伝子型を網羅的に把握できる。サンプリングは水を汲むだけで、生体への影響はほとんどない。広く用いられているミトコンドリア12SrRNA遺伝子のMiFish領域は170塩基程度の長さであるが、タイリクバラタナゴとニッポンバラタナゴ、ドジョウ(大陸型)とドジョウ(在来型)、ミナミメダカの地域系統は1~数塩基の相違により識別可能である。1~5塩基だけ相違する塩基配列のリード数を精確に決定するため、超並列シークエンサーの出力データの解析ではデノイジングを行った。
実際に在来個体群の生息地、人工のビオトープ池、飼育水槽から採水し、環境DNA分析により在来遺伝子型と外来遺伝子型を識別して、在来のみ、両者出現、外来のみ出現のいずれか判定できることを確認した。また、同一検体で在来と外来の両者が出現する場合、交雑の進行や交雑個体群の放流がおきていると判定できる。


日本生態学会