| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-313 (Poster presentation)
生物多様性喪失が危惧される熱帯林では、これまで樹種多様性に及ぼす人為撹乱の影響が調べられてきた。撹乱の強度や体制は、種多様性を規定する主因としてその影響がよく調べられてきた。しかし、標高やプロットサイズ、気候も、重要な要因である可能性がある。土地がなだらかで生産性が高い低地帯の方が、山地帯よりも撹乱の規模が大きくなる可能性が高い。また、二次林は発達段階の異なる多数のパッチから成るモザイク構造を示すが、大きな調査プロットの方が異なるタイプのパッチをサンプリングする確率が小プロットよりも高くなる。つまり、大プロットで調べた二次林の種多様性は比較的高くなる可能性がある。気候については、一般に、乾季落葉樹林は林内が明るいためフロラに占める陽樹の割合が高い一方、湿潤林は林内が暗いため陰樹が多い(陽樹が少ない)。ここで攪乱が起こると、落葉樹林では陽樹が多数加入するため種数が増えやすいが、湿潤林では陽樹の加入が少なく種数が増えにくい可能性がある。以上のように、弱度の撹乱、山地帯、大プロット、落葉樹林の方が撹乱後に種多様性はあまり低下しない或いは増加する可能性があるが、検証例はほとんどない。
撹乱体制、気候、標高、プロットサイズが、人為撹乱後の種多様性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。森林管理或いは農地放棄後の熱帯二次林と原生林(対照区)において樹種多様性が調べられた155研究を解析した。撹乱後に種多様性が低下、増加、変化なしだったのは、それぞれ55、18、27%であった。予測通り、弱度の撹乱、山地帯、大プロット、落葉樹林での研究で、撹乱後の種多様性が増加及び変化なしの割合が顕著に高かった。このように、人為撹乱後の種多様性パターンを調べる際には、撹乱体制に加えて、フロラの特性(陽樹/陰樹比率)、標高に由来する撹乱規模、サンプリングスケールにも注意を払う必要があることが分かった。