| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-315 (Poster presentation)
環境中に存在する生物由来のDNAを検出する環境DNA手法は、コスト効率的、非侵襲的であることから、生物モニタリングの手法として利用されている。特にメタバーコーディングは、対象とする分類群を網羅的に検出できることから、生態系の健全度や生物多様性を評価するうえで有用な手法である。一方で、従来の捕獲調査では河川水辺の国勢調査として、1級河川を対象とした詳細な魚類の分布データが蓄積されており、種だけでなく調査地の環境区分や使用した漁具、物理環境なども記録されている。そこで本研究では、中国地方の1級河川(小瀬川・高梁川・佐波川)において魚類環境DNAメタバーコーディングで魚類相を特定するとともに、河川水辺の国勢調査(水国調査)の魚類相と比較することで、流程に沿った流域環境区分や漁具の違いによる種の検出率の変化について検証した。環境DNAメタバーコーディングによる結果、3河川において約90種の魚類を検出した。また、ワンドなどの環境区分ごとに採水を行った地点では、河川本流のみで採水した地点(40-94 %)よりも検出種数および採捕された種の検出率が増加した(78-95 %)。一方で、潮間帯では種の検出率が低下した(14-52 %)。特にハゼ科魚類の検出率が低く、その多くはタモ網でのみ採捕された種であった。また、潮間帯は海産魚の侵入も多く、淡水域に比べて本来もつ種の多様性が高くなることから、1地点の採水では種の多様性を網羅できていない可能性がある。以上のことから、流域内の環境の違いを考慮した採水地点の設定することで、環境DNAから水国調査の努力量に匹敵する種の分布情報が得られる可能性を示した。ただし、潮間帯では環境DNAによる種の検出率が低下することから、淡水域と比較してより詳細な採水地点や環境区分を設定する必要があると考えられる。