| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-316  (Poster presentation)

MIG-seqによるシイタケ品種の識別と特異的マーカーの開発
DNA identification of shiitake cultivars and development of DNA markers using MIG-seq analysis

*佐藤光彦(東北大学), 木下晃彦(森林総研九州), 松尾歩(東北大学), 宮崎和弘(森林総研九州), 福井陸夫(食用きのこ種菌協会), 倉島治(東京大学), 大林夏湖(東京大学), 伊藤元己(東京大学), 陶山佳久(東北大学)
*Mitsuhiko P. SATO(Tohoku Univ.), Akihiko KINOSHITA(FFPRI Kyushu), Ayumi MATSUO(Tohoku Univ.), Kazuhiro MIYAZAKI(FFPRI Kyushu), Rikuo FUKUI(Edible Mushroom Spawn Assoc.), Osamu KURASHIMA(Univ. of Tokyo), Kako OHBAYASHI(Univ. of Tokyo), Motomi ITO(Univ. of Tokyo), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.)

MIG-seq(multiplexed ISSR genotyping by sequencing)法は、マルチプレックスPCRによって増幅された多数のマイクロサテライト間領域のDNA塩基配列情報を次世代シーケンサーによって並列的に解読する技術である。本手法は、これまで系統関係解析や集団の多様性解析、種の同定など幅広い研究に応用されてきた。さらにクローン・品種や親子関係の識別など、より近縁な遺伝的差異を対象とした高い精度を要する解析へも適用可能である。特に農作物等は品種の偽装表示や登録品種の海外流出と逆輸入による育成者権の侵害などの問題が生じている。MIG-seq法は実験の簡便性と次世代シーケンサーによる十分な情報量から、効率的で高精度な品種識別手法として期待される。そこで本研究では、育成者権の侵害が報告されているシイタケ登録品種に対して、Illumina社のiSeq 100によるMIG-seq法を用いて品種識別を行った。より高精度な解析のためにPCRのアニーリング温度の条件検討やクオリティチェックなどを行うことによって、十分な情報量を保ちながらエラーを限りなく0に近づけることができ、また兄弟や親子関係などの品種間も識別することに成功した。戻し交配による品種のような複雑で近縁な系統関係は識別が難しいが、関連品種に限定することによって識別できた。iSeq 100はその本体価格や取り回しの手軽さ、出力できるデータ量からもMIG-seq法に用いるのには適している。さらにMIG-seq法によって得られた配列情報に基づいて、特定の品種で特異的に増幅するプライマーを設計した。これを用いることで税関や検査の現場においてもより簡便に識別することが可能である。本研究は、農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受けて遂行された。


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