| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-321 (Poster presentation)
絶滅危惧種や希少種の有効な保全策を立案するためには、集団構造を把握し、適切な保全管理単位を作成する必要がある。集団構造は遺伝子流動による集団間の連結性や集団の遺伝的多様性をもとにした遺伝情報に基づいて推定することが可能である。
佐渡島固有種のサドガエル(Glandirana sussura)は環境省が作成するレッドリストにおいて絶滅危惧ⅠB類に分類され、具体的な保全策の立案を要する種である。その分布域は佐渡島中央部に位置する国仲平野に集中しているが、生息地間の連結性や集団構造は明らかになっていない。本研究では、遺伝構造を用いたサドガエルの集団構造を評価し、それに基づいた暫定的な保全管理単位を検討することを目的とした。
2010-2014年に国仲平野全域で捕獲されたサドガエル36集団509個体のDNAをサンプルとし、マイクロサテライトDNA6座位を用いてサドガエルの28集団484個体の遺伝的多様度(ヘテロ接合度とアレリックリッチネス)を算出した。また36集団509個体のサドガエルを対象に、STRUCTURE解析により遺伝構造の差異を評価し、これらの結果をもとに保全管理単位を検討した。
遺伝解析の結果、サドガエルのFstは佐渡島全体で0.18となり、生息域全体で遺伝的に分化していることが示された。佐渡島の西部と東部に位置する集団では遺伝的多様度が低いことから、これらの集団では生息地間の個体の移動がないと考えられる。STRUCTURE解析の結果、サドガエル集団は遺伝的に西部・中央部・東部の3つのグループに分けられることが示唆された。同様の結果は、進化速度がマイクロサテライトDNAよりも遅いミトコンドリアDNAによる解析でも支持された。以上の結果より、佐渡島におけるサドガエルの保全管理単位を設定する場合、3つに分けることが妥当であることを示唆している。