| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-322 (Poster presentation)
隣接する生態系は、栄養塩やデトリタス、生物の移動を介して影響を及ぼし合っている。一方で、離れた生態系間では、生物の移動・分散を介してつながっている。そのため、隣接する生態系間の資源流入の影響は、生物の移動分散を通じて、他の生態系にも波及すると考えられる。このような生態系間のつながりを介して、従来考えられていた環境以外の要因が、生物の個体群に大きな影響を及ぼしている可能性がある。両生類は幼生期に陸域環境の影響を強く受ける小さな水域で生息し、成体は水域間の陸域を移動することがある。そのため、陸域環境が複数の空間スケールで、両生類の個体数に影響を及ぼすと考えた。
本研究では、関東里山の小渓流に生息するトウキョウサンショウウオを対象とし、個体群サイズに影響を及ぼす環境要因を複数の空間スケールで明らかにすることを目指した。その結果、生息地スケールでは常緑広葉樹林や針葉樹林と比べ、落葉広葉樹林が成体・幼生期ともに適した環境である可能性を示し、幼生期では落葉樹林は水温とリタ―の質を介して幼生のエサ生物を増やし、幼生の個体数を増加させる可能性を示した。景観スケールでは、森林の連続性が生息地間の移出入を増やし、個体数を増加させる可能性を示した。したがって、森林環境が複数の空間スケール・生育段階を通じてサンショウウオの個体数に影響を及ぼしている可能性が示された。