| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-329  (Poster presentation)

分断された緑地における希少植物の分布状況
The distribution of rare plant species in an urbanized landscape

*相澤章仁((株)大林組技術研究所)
*Akihito AIZAWA(Obayashi Co.)

開発による緑地の減少は、植物に対して生育地の減少をもたらすだけでなく、各緑地が分断化されることによって、生育地の質の低下をもたらす。本研究では希少植物を対象とし、分断化による生育地の質の低下に敏感な傾向を持つ種を明らかにすることを目的とした。都市化して分断化された緑地と、ある程度の面積が保全されている緑地の両方を持つ千葉県柏市を対象として、希少植物の分布について市民ボランティア団体への聞き取りで、あらかじめ選定した対象種の有無を70サイトで把握した。生育地の分断化に関する指標を得るため、2018年に撮影された衛星写真を用いてNDVIを計算し、その値をもとに各ピクセルを樹林地と草地で分け、対象地からの50m、500mのバッファ内のそれぞれの土地利用割合を明らかにした。5サイト以上で出現した種、5種以上が出現したサイトのみのデータを使用し、nMDSを用いて各種の分布と土地利用の関係を明らかにしたところ、樹林の林床に生育する種と草地・湿地に生育する種がnMDS平面上で大きく分かれた。土地利用割合の変数をnMDS平面上に示すと、500mバッファの樹林地/草地面積と50mの樹林地/草地面積のベクトルが違う方向のベクトルとして示され、どちらのベクトルと各植物種の相関が高いかを把握することができた。樹林地ではサイハイランなどが500mバッファの樹林地面積と相関が高く、キンラン・ヤマユリなどは50mバッファの樹林地面積の方が相関が高い傾向が見られた。草地ではアキカラマツ・ヌマトラノオなどが500mバッファの草地面積と、ワレモコウ・アリアケスミレなどが50mバッファの草地面積と相関が高い傾向が見られた。500mバッファの樹林地/草地面積と相関が高かった種は、大規模な生育地が必要な種であると考えられ、これらの種についてはどのように保全していくかを注意深く検討する必要があると考えられる。


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