| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-331 (Poster presentation)
ワシントン条約(CITES)は、過度の採取・捕獲による野生生物の絶滅を防ぐために、野生生物の国際取引を規制している。現在182か国及びEUが加盟しており、広範囲に影響を与える環境関連条約の一つとなっている。CITESの規制対象種を定める条文附属書の改正は、約3年に1回開催される締約国会議(CoP)で審議される。議論による全会一致を目指すものの、それが難しい場合は投票に付され、附属書を改正するためには3分の2以上の投票国の賛同を得る必要がある。各締約国は、提案ごとに、条約で定める附属書掲載基準に基づき、種の絶滅の恐れや国際取引の度合いなどを吟味して、投票態度を決めることが求められる。一方、様々な情報から総合的に判断される投票態度には、種を越えて共通する各国の野生生物の保全や商業利用に対する考え方が影響している可能性がある。また、EU28カ国による統一の投票態度は、数の力により、審議結果に大きな影響を与えていることが予想される。そこで本研究では、過去6回のCoP(CoP13~CoP18)における附属書改正提案に関する投票について、各国の投票態度の類型化を試みると共に、EUの投票結果と審議結果の類似度の変遷を調べた。各国の投票態度が議事録に残る電子投票による通常投票を対象として、各国の投票態度、条約事務局による勧告並びに投票結果に基づく審議結果について、序列化及びクラスター分析を行った。その結果、CoPを問わず同じグループに属する国々があること、EU加盟国等が常に1グループを形成すること、EUの投票態度と審議結果は類似すること、一方で事務局勧告と審議結果の類似度はCoPにより差があることなどが示された。EUと異なる投票傾向を有する国々の中には、規制対象種が生息する国や、これらの種を利用する途上国も多く含まれた。これらの国々の意向は審議結果に反映されづらい状況にあると考えられる。発表では、各グループの特徴や、時系列変化についても論じたい。