| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-336 (Poster presentation)
生物多様性の主流化を推進するためには、農業生産と生物多様性保全の両立が必須であり、その中核を担う農業として環境保全型農業に期待が寄せられている。Katayama et al. (2019) J. Appl. Ecol.は日本の水田において有機・減農薬栽培が良好な生物多様性保全効果を持つことを報告しているが、水田畦畔の植物については未解析である。そこで、上記論文のデータと同時に取得された水田畦畔の植生データを用い、有機・減農薬栽培の保全効果を検証するとともに、水田畦畔における植物の出現種数に及ぼす環境要因について解析した結果を報告する。
全国6地域の水田畦畔(624圃場)で2013-2015年に1m2のコドラート調査(圃場ごとにN=2-3)を実施したデータを解析した。有機・減農薬・慣行栽培間の比較はHolm検定を行った。環境要因による影響はGLMM(ポアソン分布、ランダム変数:調査年、調査地区、観察ID)を用いて解析した。
植物は全国で453種(不明種を含む)が出現した。コドラート当たりの出現種数は有機栽培で減農薬・慣行栽培より有意に多かったが、減農薬栽培と慣行栽培の間に有意差は認められなかったため、有機栽培のみが保全効果を持つと考えられた。また、コドラート当たりの出現種数を説明する環境要因としては、畦畔における機械除草回数と除草剤有効成分数のAICが低く、コドラート当たりの出現種数は機械除草回数が多いほど、畦畔除草剤の有効成分数が少ないほど、それぞれ多かった。したがって、水田畦畔における植物の種多様性は畦畔の除草管理形態により規定されており、有機栽培による保全効果は無農薬管理で、かつ、機械除草回数が他の栽培方法の畦畔より多いことに起因すると考えられた。
なお、本研究は農林水産省委託プロジェクト研究「生物多様性を活用した安定的農業生産技術の開発」の成果である。