| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-340 (Poster presentation)
世界各地で裸地や草原といった遷移初期の環境は減少し、これに伴う遷移初期種の減少が様々な分類群で指摘されている。一方で人工林は増加しており、人工林の伐採による遷移初期環境の創出が、遷移初期種の保全に貢献することが示されてきた。ヨタカは、近年国内で最も大きく減少した鳥類種の一つだが、森林内の開放地を好み、伐採地で営巣や採餌を行うことが知られている。そこで、人工林の伐採がヨタカの生息に及ぼす影響を調べるため、標高差のある北海道中部の人工林景観において、伐採地(皆伐地、単木的に広葉樹を残す単木保持伐地、中央に人工林の一部をまとめて残す群状保持伐地、計15地点)と未伐採の人工林(3地点)、天然林(3地点)でヨタカの生息状況を5年間調べた。伐採地のうち5地点は伐採前にも調査を行った。調査は2015~2019年の繁殖期(6~8月)に実施し、各地点において携帯スピーカーでヨタカのさえずりを再生し、鳴き返した個体を記録した。北海道では、気温が高く、周囲4 kmの森林率が中程度の地域でヨタカの個体数が多いことが明らかになっており、本調査地域では標高が低い(気温が高く、森林率が中程度)伐採地でヨタカが出現しやすいと予想した。調査の結果、伐採地4地点と天然林2地点でヨタカの生息を確認した一方で、伐採していない人工林では一度もヨタカの生息を確認できなかった。一般化線形混合モデルを用いた解析により、ヨタカの生息確率は、未伐採の森林に比べて伐採地で高く、標高が低いほど高い傾向が示された。標高が高い場所では、ヨタカの生息確率が非常に低いため、伐採しても生息数はほとんど増加しないことが予測された。戦後造成された日本の人工林は伐期に達し、各地で伐採されるようになった。気候や地形、景観構造といったマクロな要因も考慮することで、伐採によるヨタカの効果的な保全が可能になると考えられる。