| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-345 (Poster presentation)
地球上の中でも特に熱帯林は、地球規模での生態系サービスを担う重要な場であるだけでなく、地域スケールにおいても地域の人々に食糧、水源、文化などの多様なサービスを与えている。開発が先行し、原生林が減少する熱帯地域において、地域スケールにおける生物多様性保全と生態系サービスの利用の両立のためには、まず生物多様性・生態系サービスの状況を理解し、それらに影響する要因を明らかにする必要がある。
本研究では、マレーシア・サラワク州を対象として、1)生物多様性・生態系サービスをマッピングしホットスポットを特定すること、2)生物多様性・生態系サービスの存在量が土地利用で異なるかを明らかにすることを目的とした。ここで、生物多様性は、サラワク州に生息するの絶滅危惧種哺乳類23種の分布から算出した種数、生態系サービスについては調整サービスとして地上部バイオマス量を用いた。
結果として、生物多様性・生態系サービスマップからは、ホットスポットが特定されたが、それぞれ異なるパタンを示した。地上部バイオマスに影響を与える要因として、森林タイプの生でも原生林や商業伐採地域は正の効果があるのに対して、農村部は負の効果を与えていた。生物多様性については、すべての森林タイプで正の効果、保護区は負の効果がみられた。つまり、1)生物多様性や生態系サービスのホットスポットは地理的なギャップが存在する、2)生物多様性や生態系サービス影響を与える主要な要因はそれぞれ異なること示唆された。発表では、地域スケールにおける生物多様性と生態系サービスの両立について、土地利用パタンの持つ役割について議論したい。