| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-346  (Poster presentation)

来訪者アンケートの自由記述からみた小規模湿地生態系の保全及び公開に関する課題
Challenges about conservation and opening to the public of small-scale wetland ecosystems based on free description of visitor questionnaire

*富田啓介(愛知学院大学)
*Keisuke TOMITA(Aichi Gakuin Univ.)

 保全されている小規模湿地生態系の利用特性を明らかにするため、2011年から2012年にかけて愛知県内3カ所の湿地(葦毛湿原・矢並湿地・壱町田湿地)の来訪者にアンケートを実施した。この結果は既報だが(地理学評論89:p53-67、2016年)、今回、こうした湿地生態系の保全・利用上の課題をより詳細に検討するため、自由記述に関して新たにテキストマイニングの手法を用いた分析を行った。
 各湿地の来訪者に、湿地を来訪して感じた満足な点と不満足な点を、それぞれ自由記述するよう依頼した。まず、得られた延べ822の回答(合計約23,000字)に出現する単語の出現頻度をみると、「説明」「植物」「花」「シラタマホシクサ」「自然」「ガイド」等の名詞や、「見る」「分かる」等の動詞が上位に位置付けられ、来訪者の関心が植物を中心とした自然環境の観察と理解、また、そのための説明を受けることにあることが示唆された。
 満足な点の記述に注目すると、どの湿地でも「見る」の使用頻度が高く、生育する特徴的な湿地性植物を示す語と強く結びついて使用されていた一方、公開時にガイドの説明を伴う2湿地(矢並・壱町田)では、「説明」「分かる」「ガイド」「丁寧」といった語の頻度も高く、また互いに結びついて使用されていた。このことから、単に湿地植物を観察するだけでなく、親切な説明を受けることが、来訪者の満足に結びついていることが明らかになった。
 不満足な点の記述に注目すると、出現頻度の高い語では、多くの湿地で「もう少し」―「広い」、「花」―「咲く」・「少ない」といった結びつきが目立った。このことは、湿地面積の小ささや開花している植物の個体数や植物種が少ないことが主な不満足要因であることを示しており、保全活動の進展が、生態系の保全再生だけでなく、来訪者の満足度の向上にも結び付く可能性が示唆された。ただ、「人」―「多い」といった語の結びつきも見られ、来訪者数の管理も必要と考えられた。


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