| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-347  (Poster presentation)

雨竜沼湿原における主要植物3種のエゾシカによる花茎被食状況
Sika deer browsing rates on inflorescences of three primary plants in Uryunuma Mire, Hokkaido

*島村崇志(道総研・環境研), 西川洋子(道総研・環境研), 稲富佳洋(道総研・環境研), 佐々木純一(雨竜沼湿原を愛する会)
*Takashi SHIMAMURA(HRO IES), Yoko NISHIKAWA(HRO IES), Yoshihiro INATOMI(HRO IES), Junichi SASAKI(Friends of Uryunuma-shitsugen)

シカの採食による植生の劣化が全国的に問題となっている。北海道でも高山草原や湿原などで、美しい花を咲かせる草本類がエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の過度な採食を受けている場所がみられる。雨竜沼湿原は、標高約850m、 面積約102haの北海道の山岳湿原としては最も規模が大きい湿原である。2015年頃から花の食害が確認されるようになったことから、被害の実態を把握するため、本湿原を特徴づける湿原植物であるゼンテイカ(Hemerocallis dumortieri var. esculenta)、コバギボウシ(Hosta sieboldii)、ナガボノワレモコウ(Sanguisorba tenuifolia var. tenuifolia)の花茎に対する被食状況を2017年~2019年に調べた。木道沿いを中心に調査区を設定し、被食された花茎と健全な花茎を結実期の9月にカウントした。花茎被食率を算定し、場所や花茎密度などを説明変数として、一般化線型モデルにより解析した。調査の結果、各調査年において、コバギボウシとナガボノワレモコウはそれぞれ86~95%と57~80%の花茎が被食されており、ゼンテイカは調査区内の99%の花茎が結実期までに被食されていることが明らかとなった。また、ゼンテイカとコバギボウシはほぼ全域で被食率が高く、ナガボノワレモコウはエゾシカの利用頻度が特に高いと考えられる場所や花茎密度の高い場所で2019年の被食率が高い傾向があった。調査対象とした3種は多年草であるが、継続的な強い被食圧による種子繁殖の低下は、個体群の存続に影響を及ぼすことが懸念されるため、対策を急ぐ必要がある。


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