| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-349 (Poster presentation)
アマゾン―世界で最も生物多様性の高い地域―では現在、空前のダム建設ブームが起きている。そこでアマゾンでのダム建設から、アマゾン川とアマゾン熱帯雨林を守るために、ブラジル政府の目的はたとえ変わらず“利益と雇用の創出”であっても、「アマゾンを開発して、利益と雇用を得る」 から 「風力等次世代エネルギーを開発することによって、利益と雇用を得る」 という、“ゲームの枠組み”を変えることによって、今のブラジル政府でも受け入れやすい代替策を提案した。
代替策の主力は風力である。ブラジルは現在すでに、合計設備容量約90 GWの水力発電設備を保有しているので、ブラジル国内、あるいは世界最大の風力発電適地である、アルゼンチンのパタゴニア地方で風力発電を大量に導入し、ロスの少ない高圧直流送電でブラジルの水力発電と連結させれば、これ以上のダムを造る必要はないと考えられるので、アマゾン熱帯雨林の破壊を、現在の電源計画よりも減らせる可能性がある。その際、風力発電を大量に導入するので、風況マップだけではなく、鳥類の餌場や繁殖地、渡りのルートなども考慮に入れたSensitivitiy マップも、風力タービンの建設計画段階から併せて使った方がよいと考えられる。
この“南米スーパーグリッド”のメリットは、(1)アマゾン熱帯雨林の保全への一助(生物多様性の保全、文化の多様性の保全、そして気候変動緩和策)、(2)持続可能な自然エネルギーへの、全球規模での急速な移行、(3)全球規模での、水素の低価格化と普及が考えられる。ブラジルとアルゼンチン、その他の南米諸国、そして国際社会は、この南米スーパーグリッドの建設に協力した方が良いと私は提案する。