| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-352 (Poster presentation)
2018年10月坂戸市森戸地区内の排水路として敷設された三面コンクリートの水路において、両生類、爬虫類など小動物が溜め升から脱出できなくなっていたのを多数確認した事例を本学会第66回大会で報告し、問題提起した。その後の2019年9月に市民有志と坂戸市が連携して落下防止ネットを敷設し、対策効果のモニタリングを実施した。
落下防止対策の手法を探るため2019年7月21日より予備調査を開始した。同年9月25日までに両生類、爬虫類だけでなく、小型哺乳類のアズマモグラ、アカネズミ、ノウサギの落下が確認され、短期間ではなく恒常的に小動物が落下していることが示唆された。予備調査期間中から市民有志が行政側との協議を重ねた結果、緊急性があると判断し、落下防止ネットと溜め枡脱出スロープを同年9月26日に敷設した。敷設作業には行政だけでなく、市民有志、近隣の大学、高校の教員、学生、生徒も参加し環境学習の場にもなった。
モニタリングは落下防止ネット敷設当日の同年9月26日より11月17日までのべ18回実施した。その結果爬虫類・両生類は登坂可能なニホンアマガエルを除き17個体を確認し、哺乳類は確認できなかった。2018年10月13日~11月5日の間には52個体の爬虫類・両生類が確認されたのに対し、大幅な減少が見られた。しかし、上流部の素掘り水路からの進入経路はふさがっていないため、水路を流下して溜め升に至るパターンは解消されていないことから、完全な解決にはつながっていない。また、モニタリング期間には大きな被害をもたらした台風19号による大雨もあった。増水により溜め升にとどまるのも難しい状況下も発生していることから、下流部に流されて溜め升で確認された小動物が少なかった可能性もある。最後に、溜め升からスロープを使っての脱出が確認できなかったことや、素掘り水路からの流下も依然として発生していると考えられ、保全対策の課題となった。