| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-353 (Poster presentation)
現在、動物愛護法や種の保存法などの法令や地方自治体による条例などによる規制対象でなければ野外で捕獲した動植物を、個人や業者がインターネットを媒体として気軽に売買することが可能になっている。そのため、国内のインターネットオークションサイトでは、多種多様な動植物が売買されている。希少な国産イシガイ類についても例外ではないが、その現状について報告された事例はない。そこで、本研究では国内のオークションサイトにおいて、環境省レッドリスト2019に記載されているイシガイ類13種の和名を含む実売記録を検索し、その結果を集計した。その結果、2009年1月~2019年12月までの11年間で希少イシガイ目10種を含んだ実売記録が延べ6009件確認できた。また、これらの取引で販売された総個体数は83741個体(明確に販売個体数の記録がなかったものは除いた)であった。最も多くの実売件数及び実売個体数が確認された種はカワシンジュガイ類であり、総実売件数の81.6%、総実売個体数の77.2%を占めていた。加えて、種ごとの実売件数と実売個体数の年変動をみると、カワシンジュガイ類の実売件数、実売個体数はともに増加傾向にあることがわかった。産地は北海道、東北地方、栃木県、岡山県、中国地方などであった。そのうち、販売個体数の最も多かった採集地は北海道であり、全体の94.7%を占めた。また、タナゴ類とセットで販売されるケースやタナゴ類の産卵母貝としての利用の明記されたケースが多数確認され、カワシンジュガイ類はタナゴ類の産卵母貝としての商業的価値があると考えられた。加えて、カワシンジュガイ類の販売数が増加する時期は,タナゴ類の産卵時期と一致した。よって、カワシンジュガイ類の季節的な販売数の増加は,タナゴ類の産卵母貝としての需要の高まりを反映していると考えられた。