| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-354 (Poster presentation)
海洋生物によるマイクロプラスチック( 以下、 MP )の誤食は生体に悪影響を及ぼす可能性があるため、世界的にも問題視されている。誤食の実態は世界で報告されつつあるが、日本周辺海域の魚類における MP の誤食についての知見は乏しい。しかし、最近、我々は浮魚類(マアジ、マサバ)で誤食が約 50 %の個体割合で起きていることを報告した(八木ら, 第66回日本生態学会年次大会)。そこで本研究では、誤食の規模を把握するために東シナ海のトロール操業で獲れた魚類を対象に誤食実態を明らかにした。供試魚は 2019 年に長崎丸のトロール操業により漁獲されたキダイ(n=20)、サギフエ(n=39)、マトウダイ(n=59)、カナガシラ(n=44)、マアジ(n=46)、カイワリ(n=73)を用いた。供試魚の体長、体重を計測した後、解剖して消化管を取り出した。胃内容物を10%KOH溶液に浸漬し、40 ℃で 10 日間静置することで生物由来物質を溶解した。その後、実態顕微鏡下で MP と思われる物体を取り出し、色、形状、長径を記録し、 FT−IR に供してプラスチックの種類を判定した。誤食していた個体割合は、マトウダイが最も高く 16.9 %で、次いでカイワリ13.7 %、マアジ 8.7 %、サギフエ 7.7 %、キダイ 5 %、カナガシラは誤食していなかった。また、 誤食していた MP のサイズには魚種間で差がなかった( Kruskal-Wallis 検定、 P = 0.247 )ことから、摂餌選択性がないことが示された。