| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-356 (Poster presentation)
鉱山掘削跡地や精錬所の周辺では開発や精錬過程に産出される鉱石の岩屑や鉱滓集積により荒廃地となり、植生回復が難しい場合が多い。また、そのような立地において生態学を考慮した自然回復を行った事例は少ない。
本調査対象地は秋田県小坂町に位置し、明治時代から銅をはじめとする金属の精錬が行われてきた場所にあたる。当地周辺はスギやニセアカシアなどの植林を試みてきたが、周辺の植生調査を行い、潜在自然植生を把握し、2006年から本来生育すべき樹種のポットさえによる植林を行い始めた。
本報告ではその植栽された樹木、樹林の生育現状を把握し、林分生長特性や個体群生育などについて得られた知見についての検討を行った。植栽に用いられた樹種はミズナラ、コナラ、ハウチワカエデ、オオヤマザクラ、シナノキ、ヤマボウシ、ナナカマドなどの夏緑広葉樹で、樹種を立地に応じて混植してある。植栽地は岩宵捨石堆積場や鉱滓が積み上げられたカラミ山の開放地のほか、将来の林層転換を念頭にニセアカシア植林下にも展開され、これまでに14万本を超える樹木が植えられている。
植えられた樹木は速くはないが確実に生育しており、高い樹林では7mを超えるに至っている。土壌のpH、含水率、窒素、炭素の量などを計測し、植栽立地、林分生長あるいは樹種特性などについて検討した。
捨石堆積場に形成された林分の方が、鉱滓集積地のそれよりも生長速度は遅く、樹木の肥大生長割合が高く、生存率は低い傾向を示していた。また、土壌中の全炭素量と全窒素量には良い相関が認められ、現在土壌養分をストックしつつある現況が見て取れた。また、アオダモの土壌水分依存性など数種において生長特性と土壌プロパティに相関が見られた。