| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-358  (Poster presentation)

北海道屈斜路湖流入河川におけるサケ科魚類の微小環境利用
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*三澤康介, 吉川朋子(玉川大学)
*Kosuke MISAWA, Tomoko YOSHIKAWA(Tamagawa university)

同所的に生息するサケ科魚類は,利用している環境や餌資源が類似しているため,種間競争または同種内の生育段階の違いによる競争がおこる可能性がある.本研究では北海道の屈斜路湖流入河川に生息するサケ科魚類が利用する微小環境を比較し,河川内や河川間での利用環境の違いを明らかにすることを目的とした.

 屈斜路湖流入河川であるオサッペ川,エントコマップ川,アメマス川の上流・中流・下流それぞれ3か所に,流程30 mの範囲で調査区を設定した.各調査区において河川内のサケ科魚類を水中ビデオカメラで1分間撮影し,各個体の魚種と定位点を記録した.また,魚の模型を用いて個体の体長を推定した.その後,定位点の水深(cm)・流速(cm/s)・カバーの種類を記録した.

個体間で他種や他個体を排除するような行動は見られなかった.利用されていたカバーは淵・岩・倒木であった.似た体長のアメマス・ヤマメ・オショロコマが同所的に定位している場合,最も上流を利用していたのがオショロコマ,そのすぐ下流を利用していたのがアメマス・ヤマメであった.アメマスは水深の深い位置を,ヤマメはその上の水深が浅く流速の速い位置を利用していた.オショロコマとヤマメのみが同所的に定位している場合は浅い位置にヤマメ,深い位置にオショロコマが定位していた.

当歳魚とみられる小型個体はどの種においても岸近くの浅い流れの緩やかな場所を利用していたが,体長が大きな個体は流心部や淵を利用していた.大型個体の場合,イワナ属であるアメマスの大型個体は淵に加えて倒木をカバーとして多く利用し,サケ属のヤマメは淵や堰下の利用をしていた.オショロコマはイワナ属であるが倒木をほとんど利用しておらず,ヤマメと同様に淵や堰下に多くみられたが,ヤマメよりも深い水深を利用していた.


日本生態学会