| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-360 (Poster presentation)
鳥取砂丘は日本で最も有名な海岸砂丘で,毎年多くの観光客が訪れる。多数の観光客が集中することで砂丘に生育する植物への踏みつけ等の影響が懸念される。一方で,鳥取砂丘では植物の増加による「草原化」の対策として毎年継続して除草活動が行われており,状況は複雑である。そこで本研究では,ドローンで砂丘上空から撮影した画像と地上の結果を組み合わせて,近年の鳥取砂丘の植物群落の変化を明らかにした。あわせて,砂丘内の踏みつけ量を定量化し,植物群落の変化との関係について考察した。調査は鳥取砂丘の砂地が連続している範囲138 haを対象とした。2016年と2018年の夏季に小型UAVで上空から撮影した画像を使用し,これを合成したオルソフォトを利用して,ArcGIS上で両年の植物群落分布のポリゴン化を行った。地上で植物群落の種組成と優占性を2015年と2018年にそれぞれ調査した。踏みつけ量は,オルソフォトで確認できた足跡をもとに100mグリッド単位で5段階の踏みつけレベルに変換した。ポリゴン化した群落は2016年から面積を拡大したものと縮小したものがあったが,面積で1%から20%縮小した群落が最も多かった。現地植生調査によると,ハマニガナの被度が最も減少するとともに,オオフタバムグラやメヒシバは消失した地点が多かった。ドローンによる踏みつけ推定では,汀線付近が低く,観光客が集中する場所で高くなった。汀線付近では面積が拡大した群落が多かったが,これは植物への踏みつけが少なかったことが関係している可能性がある。オオフタバムグラとメヒシバは除草作業の影響を大きく受け消失した可能性がある。ハマニガナの大幅な減少は2018年の記録的猛暑が影響した可能性が考えられた。ドローン活用により少ない労力でより正確な植生データを得られる目処がたった。