| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-361  (Poster presentation)

UAV・VRカメラを用いた湿原植生調査法の有効性評価
Assessments of mire vegetation survey method using the UAV and VR camera

*中村隆俊(東京農業大学), 磯野隆弘(東京農業大学), 山田浩之(北海道大学), 鈴木透(酪農学園大学)
*Takatosi NAKAMURA(Tokyo Univ. of Agriculture), Ryukou ISONO(Tokyo Univ. of Agriculture), Hiroyuki YAMADA(Hokkaido Univ.), Toru SUZUKI(Rakuno Gakuen Univ.)

 湿原は最も脆弱で減少が著しい生態系の一つとされており,残存する湿原の多くが人為的撹乱の影響を受けつつある.こうした背景から,とりわけ植生変化の把握は生態系劣化の徴候を把握し対策を検討する上で不可欠なモニタリング項目であるといえる.しかし,湿原内部へのアクセスは一般に容易ではない.また,立ち入りによる植生への踏圧ダメージや,希少動物への影響も懸念される.これら湿原特有の事情は,立ち入り調査への強い制限となっている.
 近年,カメラ搭載UAVを利用した様々なモニタリング調査が行われるようになった.しかし,それらの空撮調査では植生の表層しか情報を得ることができず,群落内部の中・小型種に関する情報は得られなかった.従って,出現する全種名とその被度を記録する従来の植生調査の代替とはなり得なかった.一方で,近年では小型・軽量で高精細画像が得られるカメラが多数市販されるようになり,なかでも全方位動画が得られるVRカメラの小型化や性能向上は目覚ましい.そこで本研究では,UAVの良好な操作性を生かし,UAVから吊り下げたVRカメラを植生群落内に挿入することで群落内部情報を含めた全方位撮影を行い,得られた画像を用いて植生調査を試みた.
 地上で行った従来の植生調査結果と比較して,画像調査による種の発見率は平均で約60%となった.被度の高い種では発見率100〜90%を示したが,被度が5%以下の種の多くは発見率30%以下に低下した.被度の判読精度については,本来の被度に対して平均で約60%の誤差となった.TWINSPANによる群落分類結果について画像調査と地上調査を比較したところ,両者の一致率は約90%に達した.なお、VRカメラ搭載UAVを用いた植生調査法のプロトコル開発については本学会P2-PC-383にて発表している。


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