| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-362 (Poster presentation)
本研究は、環境DNAによりニジマスの分散ポテンシャルをマップ化し、さらに環境DNAメタバーコーディングにより在来魚群集の生息状況をマップ化することを目的とした。その上で、在来魚群集にとって好適な水系や生息地を抽出し、ニジマスの分散から受けるリスクの大小を検討することを目指した。調査地は上川平野の石狩川、忠別川およびその支流の16地点とし、2018年10月—2019年8月にかけて1ヶ月に1回の環境水の採集を計11回実施してMiFish法によるメタバーコーティングを実施した。その結果、サケ科やコイ科を含め12科36群の魚類を検出した。地点ごとの種数の範囲は12–23種で、フクドジョウ、ドジョウ、ハナカジカ、エゾウグイが全地点で検出され、外来サケ科のニジマスも全地点で検出された。国内外来種であるナマズも2地点で検出された。全体として、ニジマスを除くと在来種の比率は高かった。重点を置いているサケ科については、ヤマメ(またはサクラマス) の検出地点が15、アメマス(広義イワナ)が12、オショロコマが11、サケ(シロザケ)が11と、在来サケ科は全地点で検出された。立地条件を加味して調査地点ごとに整理すると、石狩川中流域(旭川市内)でも検出種数は多く、なかでも旭川市中心部の調査地点である旭橋では最大の23種が検出された。また、鱒取川やピウケナイ川という石狩川への流入河川と忠別川の調査地点で検出種数が多い傾向が見られたが、石狩川の支流のオサラッペやノカナンでは検出種数が少なかった。また、忠別ダムの周囲は上流側下流側を問わず、全体として検出種数が少なかった。以上から、忠別ダムの周辺での淡水魚相が劣化傾向にある一方で、忠別川下流および忠別川と石狩川との合流点より下流において淡水魚相が豊かである傾向が示された。ニジマスとの排他的な関係については計画当初の予測に反して検出できず、これをどのように解釈すべきか、調査をどのように続けるべきか、今後の課題である。