| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-370  (Poster presentation)

大規模な人為的撹乱後の山菜の個体群サイズと生産性の時間的変化
Time-sequential process of demography and productivity of a wild edible bamboo after large-scale anthropogenic disturbance

*片山昇(小樽商大), 岸田治(北海道大), 高木健太郎(北海道大)
*Noboru KATAYAMA(Otaru Univ. Com.), Osamu KISHIDA(Hokkaido Univ.), Kentaro TATAGI(Hokkaido Univ.)

 山野に自生する山菜は、収穫や林業施業などの人為的撹乱の影響を強く受ける。例えば、北日本特産の山菜のチシマザサでは、その生育地で樹木の更新を促すために広範囲にわたってササを刈取る施業が行われている。このような大規模撹乱(伐採)は、タケノコの生産性を長期的に低下させると予測される。本研究は、山菜資源の持続的な利用を目指し、タケノコの生産性へ及ぼす大規模撹乱の影響を評価することを目的とした。そのために、過去数十年にわたり施業履歴(大規模伐採を行った場所と年)が利用できる北海道大学・天塩研究林で野外調査を行なった。調査地として大規模伐採から2〜44年経過した場所14ヵ所を選定し、それぞれの場所で伐採した境界の内側10mの地点(伐採区)に、1m四方の測定プロットを4個あるいは10個作成した。そのプロット内の親ササ(当年以前から出現した古い茎)の密度とタケノコ(当年に出現した食用可能な若い茎)の生産数を記録した。また、伐採を受けなかった場合のササの密度は各調査地で異なるため、大規模伐採からの回復過程の評価には、各場所での潜在的な密度を考慮する必要がある。そこで、各調査地において「伐採区から数十m離れた伐採履歴がない場所」を対照区とし、対照区との相対的な比較によりササ林の回復状態を評価した。
 大規模伐採からの経過時間が10年未満の場所のササ密度は、伐採履歴のない対照区との相対評価で、11%程度の回復状態であった。加えてこれらの場所では、タケノコの生産性も極めて低かった。大規模伐採から15年経過した場所ではササ密度は62%に回復し、伐採区と対照区でその密度に有意差はみられなかった。また、伐採後15年以上の場所では、タケノコの生産性も対照区と有意差がみられないまでに回復していた。以上の結果から、大規模伐採からタケノコの生産性が回復するには、10数年かかると予想された。


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