| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-371 (Poster presentation)
都市域における生態系サービス向上を目指し、訪花昆虫の花粉媒介の働きを補助する蜜源植物を屋上緑化に導入する試みが進んでいる。一方で、近年は潅水コストと土壌厚を抑えた粗放型の屋上緑化が望まれているが、このような栽培環境は夏季に土壌が乾燥するため、蜜源植物の生育を良好に保つのが困難な場合が多い。その解決策の一つとして、セダムの混植が挙げられる。CAM型光合成を行うセダムを混植することで蒸発散量が抑制され、土壌水分量が増加することで、植物体の生育が良好に保たれることが分かっている。一方で、セダムの混植が有効な蜜源植物の種特性については詳細に解明されていない。植物体のバイオマスによって土壌水分の需要が異なり、セダム混植の効果も同様に変化する可能性があることから、その関係性について明らかにする必要がある。よって本研究では、夏季に蜜源となるキバナコスモス(Cosmos sulphureus)を異なる生育段階で分別し、セダム(Sedum album)との混植実験を行うことで、植物体のバイオマスがセダム混植の効果に及ぼす影響の解明を目指した。キバナコスモスの播種30日後、38日後、46日後、54日後に潅水を止め、1ヶ月間の乾燥実験を行った結果、播種30日後の個体を除いてセダム混植時の方がキバナコスモスの生育は良好に保たれていた。土壌水分量はセダム混植時の方が高い場合が多かったものの、キバナコスモスの栽培期間が長い植栽区ほど、セダム混植の有無で有意差がみられ始める時期が早かった。また、栽培期間が長い程、キバナコスモスの乾燥重量は大きかった。植物体のバイオマスにより混植の効果が異なったのは、セダムのCAM型光合成が乾燥条件下で誘導される特性から、バイオマスが大きい方が土壌水分の利用量が多く、セダム混植による蒸発散抑制の程度が顕著であったためと推察された。得られた結果から、バイオマスの大きい蜜源植物の方がセダム混植の効果が顕著にみられる可能性が示された。