| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-372 (Poster presentation)
主に山地にある造林地で持続可能な林業を行っていくために、地拵えから初期保育にかかる再造林コストを低減することが求められている。コスト抑制には、苗木代や下刈り費用など個別の作業工程の低コスト化だけではなく、再造林施業全体を通して低コスト化を図ることが重要である。とりわけ関東地方でも標高の高い山地では、冬季に気温は零下になり風も強いので林木の育成には不利な環境と考えられる。このような再造林地でコストを抑えて苗木を育成するためには、苗木の種類と育成の方法を適切に組み合わせた施業を行う必要がある。
しかし、施業工程の最適な組み合わせは十分に検討されていない。例えば、大苗は普通苗より価格が高いが、植栽間隔を広げて低密度に植栽すれば面積当たりのコストは下がる。また、近年はシカによる食害が深刻だが、適切な苗木の保護用具を選択すれば獣害対策のみならず下刈り回数の低減も期待できる。このような期待の一方で、標高の高い造林地でどのような組み合わせが効果的なのか明確ではない。そこで、本研究では標高の高い植栽地において、大苗を低密度で植栽し単木単位で保護した場合に、苗木の生存と成長への影響を明らかにすることを目的とした。
植栽試験は群馬県甘楽郡下仁田町の稲含山国有林で行った。標高約850~1000 mの西向き斜面の6林分に、2016年6月にスギ苗を植栽した。苗木の種類は普通苗(約45 cm)と大苗(約80 cm)、植栽密度は通常(2000本/ha)と低密度(1500本/ha)を設定した。また、苗木の保護用具はシカ柵、ネット型単木保護、筒型単木保護の三種類を用いた。毎木調査を2019年10月まで4回、毎年秋に行った。その結果、大苗は裸苗やコンテナ苗と比べて到達樹高が高かった。また、筒型の単木保護用具では苗木の枯死が顕著であった。本発表では、苗木種類、植栽密度、保護用具それぞれの効果を統計的に検討する予定である。