| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-373 (Poster presentation)
魚類の生態調査は投網、素潜り、聞き取りなどで行うため、多大な労力と時間を要する。そこで近年では、河川・湖・海から採取したサンプル中に含まれる魚類由来の環境DNAを、メタバーコーディング用ユニバーサルプライマー(MiFish)を用いてPCRで増幅し、魚類由来の塩基配列を次世代シーケンサー(NGS)で解析する手法が注目されている。これにより得られた塩基配列から優占種、希少種を割り出すことができる。しかし、少ないリード数の塩基配列は、分析操作中におけるクロスコンタミネーションやシーケンスエラー由来のノイズ配列の可能性もあるため、環境中に実在した希少種由来の真の配列と明確に判別する基準はなかった。我々はこの課題を解決するため、既知コピー数のDNAを標準試料として分析対象サンプルを添加することで、既知コピー数のDNAと相関があるリード数を閾値として、それ以下のリード数の塩基配列をノイズ配列として除くことを可能とする手法を開発した。本研究では、ウナギ目、スズキ目、コイ目の魚類からそれぞれ代表種を選出し、実際の魚類の塩基配列と高い相同性を維持した塩基配列を設計し、これを標準DNAとした。これら3種の標準DNA由来のリード数からノイズ配列を判別するための閾値を設定する手法の妥当性を検証した。既知コピー数の標準DNAサンプルの作製には、希釈法では困難なごく低コピーを扱う必要がある。そこで我々は、標準DNAを1コピー含有する細胞を作製し、インクジェット技術を応用して1細胞ずつカウントしながら規定数の細胞を分注する手法を採用した。この手法により、容易に既知コピー数の標準DNAサンプルの作製が可能である。調製した既知コピー数の3種の標準DNAに湖、河川から採取したサンプルを添加し、NGSを用いて解析を行い、既知コピー数の標準DNAを用いた閾値設定手法の妥当性、及び再現性を検討した。