| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-374 (Poster presentation)
本研究は、種多様性の異なる河川堤防植生を対象として、草原性植物の種内および種間でのアーバスキュラー菌根菌(以下、AMFとする)群集の差異を明らかにすることで、種多様性の高い堤防植生の保全再生の可能性について検証することを目的とした。調査地は千葉県内の利根川河川堤防に成立する地上植生の多様性の異なる10地点とした。各地点に1m四方のコドラートを3つ設置し出現種の根を採集した。植物根からDNAを抽出しAMFのrRNA領域を次世代シーケンサ―(MiSeq)でシーケンスし、DNAバーコーディングによりAMFに該当するOTUを選別した。分析の結果、地上植生の多様性とAMF群集の多様性や群集組成は、有意な関係性を示すことが分かり、AMF群集の違いが地上植生の多様性に影響を与えている可能性が示唆された。AMFのOTU数や多様度指数は、地上植生の多様性が高い地点ほど高く、AMFの群集組成も地上植生の多様性に応じて有意に異なっていた。また、在来種と外来種の間でAMFの群集組成に有意差が確認されたが、こうした種間の差異は地点(環境)の差を反映していると考えられた。植物種内でのAMF群集の差異を、在来種4種(チガヤ、ヨモギ、スズメノヤリ、ワレモコウ)に着目して比較した結果、チガヤとヨモギでAMFの群集組成に地点間で有意差が確認された。在来種の中には、地上植生の多様性に応じてAMF群集組成が異なる種が存在すると考えられる。現在、限られた地点でのみ維持されている地上植生の多様性が高い地点については、植物のみならずAMFについても多様性の低い地点へのソース集団として機能すると考えられ、優先的な保全が求められる。