| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-384  (Poster presentation)

地域住民との対話に向けて社会・生態システムの将来予測実験の結果をどう翻訳するか?
How can we translate future simulation results of social and ecological systems for communication with local people?

*前田真理美(大阪大学), 芳賀智宏(大阪大学), 松井孝典(大阪大学), 町村尚(大阪大学), 橋本禅(東京大学), 齊藤修(国際連合大学)
*Marimi MAEDA(Osaka University), Chihiro HAGA(Osaka University), Takanori MATSUI(Osaka University), Takashi MACHIMURA(Osaka University), Shizuka HASHIMOTO(The University of Tokyo), Osamu SAITO(UNU-IAS)

生物多様性の危機や気候変動への長期の対策には、シナリオ分析による具体的な目標追求と政策選別が有効だ。特に、生態系との共生は流域や基礎自治体区分などの地域で行われるため、シナリオ分析で提案された目標や政策を地域スケールでの行動にダウンスケーリングする必要がある。本研究では、社会・生態システムの将来予測を通して目標に到達するための生態系管理を特定し、地域の人々の具体的な行動指針に翻訳する一連の手法の開発に挑戦した。
北海道東部の別寒辺牛川流域を対象に、設定した将来像を実現するための自然の管理方法の特定と自然の状態と生態系サービスの定量的な評価を行った。IPBESのシナリオ&モデルタスクフォースが作成中のNature Futures Frameworkを参考に、自然、人間社会、文化という異なる観点を重視した3つの自然の将来像をシナリオに設定した。重視する観点が異なるため、シナリオ別に評価指標を設計した。自然重視シナリオでは代表的な野生生物種のシマフクロウとクマタカの生息適性指数と植生自然度、人間社会重視シナリオでは木材・牧草の収穫量と再生可能エネルギー (太陽光・木質バイオマス) の導入ポテンシャル、文化重視シナリオでは観光地からの視野内のシマフクロウの生息適性指数で観光面を、河畔林バイオマスと牧草地面積で産業面を評価した。シナリオ別の植生動態を森林景観モデルのLANDIS-IIで2016年から2100年までシミュレーションした。各シナリオの評価指標が最大となる牧草地・森林管理方法をグリッドサーチで探索した。牧草地管理は耕作放棄面積と放棄後の利用方法、森林管理は主伐方法と伐期、植栽する樹種をグリッドサーチの変数に設定した。
結果から3つの将来像を実現する森林と牧草地の管理方法と放棄牧草地の利用方法が示された。自然重視と文化重視シナリオでは指標の変化が類似した一方、人間社会重視シナリオは異なる傾向を示した。以上の結果を非研究者にも伝わる表現に翻訳することを試みた。


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