| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-387 (Poster presentation)
日本ではここ数十年の間に、イネ科草本が優占する半自然草原の多くが失われてきた。 その要因として、人の草原への関与が乏しくなり優占種の過密化や森林遷移が進行することや、土地利用の変化などがあげられる。現在、草原の減少により、草原に特有の植物相の維持が困難になりつつある。このような草原の生物多様性の変容をとらえるためには、草原を特徴づける植物(草原生植物)の組成や多寡を指標とすることが有効と考えられ、多くの研究・保全活動でこの指標が用いられてきた。しかし、草原生植物の定義は研究者・調査者によって様々であり、図鑑や地方植物誌、レッドデータブックなどで草原を主たる生育環境とする種が示されているものの、同一の基準で種の草原生の是非を判定し、その全容を明らかにしたリストは存在しない。
そこで本研究では島嶼部を除く西日本に分布する草原生植物のリストを作成することを目的とした。まず対象とする草原を、ススキ、チガヤ、シバ、カリヤスなど陸生のイネ科草本が優占する、半自然草原または自然草原に限定し、これら草原にのみに出現する種および、他の環境にも生育が認められるがこれら草原を主な生育地とする種を草原生植物と定義した。次に調査対象を島嶼部を除く西日本に分布する日本在来の維管束植物を、各種資料(植物図鑑および便覧、地方植物誌・植物目録・生物目録、植生誌、全国版および都道府県版RDB)をもとに抽出し、222科4229種に調査対象種を絞り込んだ。判定作業では、調査対象種から高木種や、既存文献の記述により他の生態系に特徴的な種と判断されているものを除いたのち、既存文献の生育環境記述や研究者・調査者の経験など草原生と判断される複数の情報が得られた種をリストアップした。その結果、約800種が草原生植物として判定され、約80種が判定保留種として残された。本発表では判定された草原生植物のリストを掲示し、大会参加者からの検証・批評を得たい。